12枚中5枚は封を切っています。 他は未使用です。 能楽・観世流の名人を集め、有名演目56曲を素謡で録音し、筑摩書房とビクターが1995年に出版した、全３集のＣＤ集です。 すべて当時の新録音です。絶版ですが、演者に先代の銕之丞や、同じく片山九郎右衛門（幽雪）などの物故者が含まれ、埋もれてしまふのはあまりにも惜しいと思ひます。 素謡とは、囃子方なしで、謡曲の台詞を語り節を吟ずるものです。 能の台本を、節回しを知らずに黙読するのは、味はひが全くなく無意味です。かといつて舞台を見ても寝てしまふ一般の方には、素謡の鑑賞が大いにお奨めです。囃子がないので時間が短く（30分～１時間くらゐで１曲がをさまります）、かつ言葉が聞き取りやすくなります。私は20年以上師匠について謡を教へてもらひ、やつと何のことやらわかるやうになつてきましたが、今でも能楽堂に出かけるより、カーステレオで素謡を流してゐる方が好きです。 能の解説本はいろいろありますが、ああいふものを読んで筋や主題を頭で理解するより、ぢかにツヨ吟ヨハ吟の音階を聞き、大ノリ中ノリ等のリズムを感じ、縁語や掛詞の技巧を経験してみることをお勧めします。 第１集の構成は以下の通りです。シテのみ挙げます。 １、高砂・梅若六郎、羽衣・観世清和 ２、弱法師・観世銕之丞 ３、経正・観世芳伸、百万・藤波重和 ４、善知鳥・藤波重満、紅葉狩・角寛次朗 ５、松風・観世清和 ６、小袖曽我・坂井音重、葵上・観世喜之 ７、草紙洗小町・谷村一太郎 ８、松虫・杉浦元三郎、殺生石・観世恭秀 ９、杜若・生一左兵衛 10、安宅・梅若六郎 11、竹生島・木月孚行、忠度・山本真義 12、小督・片山九郎右衛門、小鍛冶・観世芳宏 観世流にはほかにも録音があり市販されてゐます。現在、宗家の清和氏の監修により、新たな吹き込みが進行中で、観世元昭、元正氏の既成の録音と併せシリーズ化がなされ、2019年6月28日現在、90巻の「三輪」まで出てをります（アマゾンでは扱つてゐないやうです）。